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大阪府立国際児童文学館 大阪の児童文化の振興に資し、もって児童の健全育成に寄与することを目的とする。
開館 1984/05/05 閉館 2009/12/27
延床面積 3100u
所在地  大阪府吹田市千里万博公園10−6           訪問日 平成20年9月9日(火)        地図
アクセス 大阪モノレール「公園東口駅」から徒歩10分
管理運営 大阪府 財団法人大阪国際児童文学館
利用案内 毎週水曜日(祝日の場合は翌日)、毎月月末日(月末日が水曜日の場合はその前日)、特別整理期間
       9:300〜17:00(閲覧及び複写の請求は16:00まで)
 大阪モノレールの公園東口駅から歩いて10分のロケーションにある。駅からそう遠いわけでもないから、利用するのに不便はないとの判断かもしれないが、公園東口駅は山田駅で乗り換えが必要なこと。万博公園内にあるため、一般の住居地域から隔絶されたところにある、などのために、気楽に訪問できるようなところではない。万博公園にやってきて、「ここはなんの建物なの」とちょっと立ち寄ってみて、「立派な設備があるんだなあ」と感心して帰るのが落ちだろう。

児童文学館全景 大阪府の財政再建プログラム案で「財団は抜本的見直し(21年度中)、施設は21年度中に廃止し、中央図書館へ移転する」と俎上にあがった箱もののうちの一つである。
 大阪府の橋下徹知事は9月6日、府が財団法人に運営させている国際児童文学館で、職員の働きぶりや展示の工夫などをチェックするためにビデオの隠し撮りをしていたことを報道陣に明らかにした。この報道を読んで自分でも確かめてみようと思って行ってきました。

 新学期が始まり火曜日の午前中という時間帯のせいなのか、いつもそういう状況なのか、私が訪問したときに、ちょうど見学?を終えて出てきた中年のご夫婦が一組、館内に滞留している3名の男性、そして、私が約1時間程見学して帰ろうとしたときに、1階の受付に30代と思われる二人連れの女性がやってきただけでした。くだんの女性も受付の職員さんとのやり取りから、ぶらりと立ち寄った様子が伺えます。

1Fフロアー俯瞰 建物の1階は小学生以下を対象とした蔵書、2階を中学生以上の蔵書と大きく分けていることが、職員さんとの話で分かりました。開架式の棚と蔵書式の棚に分かれています。多くの書籍はパソコン検索して申し込みをすることで閲覧できる。館外への貸し出し可能書籍は蔵書の中の一部に限られている。児童文学館と銘打っているから、書籍及び資料は児童書およびその啓蒙書と関連の専門書に限られている。  一般書を読みたい、借りたいと思う人の要件に合致しないから利用者が少なくなるのは当然。

 この施設を売却して、他の大阪府立の図書館に統合するということのようであるけれども、空き家となったこの建物を誰が買い取って何に利用できるのかも疑問である。また、ここに収容されている書籍、資料などの移転費用も馬鹿にならないと思われる。それならば、この児童文学館を大阪府立万博公園図書館として残し、普通の機能を持つ図書館にして残すべきだと思われます。大阪府立の図書館は、中央図書館(東大阪)と中之島図書館(大阪市北区)の2か所しかないんです。

 児童文学館を運営する財団法人大阪府立国際児童文学館を廃止すれば、そこに働く理事、監事15名の報酬だけでも節約になるのではないかと思われます。勤務しておられる職員の方は、自分の責任で来館者が少ないわけでなく、そのために楽な仕事といわれもない評価をされても如何ともしがたいと思います。もっと忙しくてもよいから、来館者が多いことを望んでおられるはずです。その証拠に、私が利用の仕方、資料の検索、そのほかの質問をさせていただいたときに、真摯な態度でお答えくださいました。

 平成18年度(調べた時点で最新)の収支決算書をみると、事業活動支出金約1億8千万に占める人件費(報酬、職員給与、賃金、共済費)は約1億1千万円であることが分かります。このうちの何割かが必要なく、何割かが軽減できるのでしょうか。  

中央エントランス 2F入口から閲覧室を見る 児童館入口から太陽の塔を見る
いよいよ廃止が決定した (平成21年12月29日の追記)
(平成21年12月26日の新聞報道)
 大阪府の財政再建の一環で来年3月末での廃止が決まった府立国際児童文学館(吹田市)が、27日を最後に閉館する。子ども向けの絵本やマンガ、原画などの所蔵資料約70万点は府立中央図書館(東大阪市)に運ばれて保存され、来年5月ごろから一部資料は公開される。
 国際児童文学館は、児童文学研究者の鳥越信さん(80)の所蔵資料12万点を元にして84年に開館。資料全体の約6割は研究者や出版社からの寄贈だが、廃止・移転に反対する作家や研究者、出版社側から移転後に寄贈が受けられるかは不明だ。

 箱物行政に鉄槌を下す橋本府政がなしえた結果である。問題なのは建物も含めた跡地の利用にめどが立っていない。国際児童文学館を廃止して跡地をそのまま府立の図書館として利用すればと思うのだが。不便な場所にあるけれども、児童文学館としての門戸が狭いものから、一般の図書館になればもう少し利用者も増えるのにと思うのだが。ただ、図書館に模様替えをするにも、役員報酬などの根源を断ちきったものでなければならないけれども。
 報道の中に述べられている、「資料全体の約6割は研究者や出版社からの寄贈だが、廃止・移転に反対する作家や研究者、出版社側から移転後に寄贈が受けられるかは不明だ。」を読んで驚く。作家や研究者などの了見の狭さ。寄贈した書籍、資料などが、これから図書館で今まで以上に閲覧され利用される機会が増えるというのに。

 テレビの報道の中で、「廃止されるから来てみました。なくなるのは残念です。」という母親のインタビューへの答えは、廃止されることで初めてこの施設があったことを知った、役に立っていなかったのだ、という裏返しの回答でもある。そうなんです、極めて利用者が少なかったのですから。存続させておくのがモッタイない。

財団の新しいスタートに際して (平成22年4月21日の追記)
(以下に、HPの記述を転載しました。)
 旧児童文学館は、大阪府において、「大阪府立中央図書館国際児童文学館」として、5月のオープンを目指して準備を進められています。資料の収集・整理・保存・運用等については、基本的にこれまでの方法を引き継ぎ、図書館部分とは閲覧室も書庫も明確に区分した運営をされるとのことであります。

 廃止が決まったという報道のあと、廃止のはずが移転に留まっていることを知って驚いています。図書資料などが中央図書館の蔵書とは別に管理されるとあれば、何をか云わんである。

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