HOME - あちこち霊場をめぐる - 西国愛染明王
仏様は、如来部、菩薩部、明王部・・・と、いろいろな部に所属分類されています。その、明王部のうちの一つの仏様が愛染明王です。よく知られている明王には不動明王がある。愛染明王の功徳は衆生の苦悩を即滅して、全身全霊を尽くして願をかなえようとされる。人間には、天然の災害や火災・病などの種々の災難から逃れたい(息災)、物事の繁栄・成長をはかりたい(増益)、怨敵などを押さえ鎮めたい(降伏)、異性と円やかに和合したい(敬愛)、天の恵を得たい(鉤召)という五つの願いがあり、それを叶えようというのが愛染明王である。
わたくしの西国愛染明王霊場巡りが始まるきっかけは、天王寺七坂を探索に来たとき、愛染坂を登り切った所に勝鬘院愛染堂を見つけたことに始まる。霊場の数が17ヶ所でありその殆どのお寺が比較的近くにあるので、回りきるのにそれ程時間がかからないだろうと始めることにしたわけです。
大阪市天王寺区夕陽丘5−36 地図
アクセス 大阪市営地下鉄谷町線四天王寺夕陽丘駅下車徒歩2分
大阪では愛染まつりでよく知られる。このお祭りは天神祭、住吉祭と並んで大阪の三大夏祭である。私もそこまでは知っていたがそれ以上のことは知らなかった。今日、愛染堂にお参りをして、色々なことを学んだ。勝鬘院愛染堂は和宗総本山四天王寺の別院で愛染明王が祭られている。堂のすぐ傍から松屋町筋の方向西側に下る坂道は愛染坂と呼ばれ、天王寺七坂の一つとして有名な坂である。
愛染明王勝鬘院(あいぜんみょうおうしょうまんいん)と書かれた石塔が脇に立っている山門をくぐって石畳の参道を進むとすぐにもう一つ門(薬医門)がある(写真左)。境内の正面が金堂で愛染明王が本尊として奉安されている。このことから金堂を愛染堂とも呼ぶ。金堂の裏には二層の多宝塔があり、これは重要文化財に指定されている。境内にはこのほか稲荷社、七福神、金剛力などの祠、禅堂などがある。
本尊の愛染明王像は秘仏となっていて普段は本堂正面の厨子の中に奉安されている。愛染まつりの6月30日から7月2日と正月の12月31日深夜から1月7日まで開帳される。代わりに写真が浄財を受ける箱の上に飾られている。
西宮市門戸西2−26
アクセス 阪急電鉄今津線門戸厄神駅下、北西へ約500m徒歩12〜13分 地図
駅前から「門戸厄神参道300m」の看板を頼りに歩く、途中にも矢印をつけた門戸厄神への案内が何箇所か出ているが、12〜13分はかかる距離にある。門戸厄神は正月3ヶ日や1月18日・19日の厄除大祭は多くの参拝客で賑わう。その為か途中に参拝者のための無料駐車場が何箇所か用意されていた。
42段の石段(男厄坂)を上りきったところが表門でその前に中楼門があり、左右からそれぞれ階段がついている。どちらから上がってもちょうど33段で中楼門をくぐって本殿前に出る。この階段は女厄坂と呼ばれている。それぞれ、42段、33段は男の厄年と女の厄年に合わせた段数になっている。
今日は訪問時間が遅かったので、薬師堂、愛染堂など扉を閉ざしていて堂の中を見ることが出来なかった。扉を閉ざしていなくても、普段は愛染明王は開帳されていないようなことを若いお坊さんはおっしゃっておられた。
神戸市北区道場町生野1078−1 地図
アクセス JR宝塚線道場駅下車1.7km
午前中に降った雪が積もって境内は一面雪景色でした。寺までの道のりは、JR道場駅から車の走る道をつづら折れしながら約35分の行程です。さいわい道路には雪が残っていなかったので、足元を気にすることなく歩けました。ときおり日差しが雲間から漏れ、午前中の雪と風が嘘のようです。
今日は、寺を訪れる人も少なく、新雪の上に残る足跡もまばらで、自分の歩く後が雪道の上に残ります。靴の下で雪がキシキシと音をたてます。参道を進むと右のほうへ迂回して上ってゆく坂道と、左に折れて本堂の正面に至る道がついています。坂道を行くと右手に40段程の石段があり、弁財天を祀るお堂があります。階段の先を更に進むと、護摩堂、虚空蔵菩薩を祀る三重の塔を経て本堂の前に出る。
本堂に愛染明王様が祀られているのですが、扉は閉ざされている。毎月22日の祭礼と護摩供を行う日などに開帳されるとの事です。
このお寺で気がついたことは、堂前に吊るされている鰐口がないことと、浄財を受けるための賽銭箱が置かれていないことです。唯一、虚空蔵菩薩を祀る三重の塔の前に賽銭箱がありました。ここにまとめてお賽銭を入れてきました。
境内の諸堂の配置は図のようになっています。
第四番 摩耶山天上寺中院(摩耶山寺) 平成18年11月23日訪問
神戸市灘区摩耶山町2−12 地図
アクセス
JR・阪急・阪神の各三宮駅から市バスに乗換え摩耶ケーブル下下車、ケーブル、ロープウェーに乗継ぎ山頂駅下車徒歩約10分
ロープウェー駅から尾根道を歩いてゆくコースもあるが、摩耶ドライブウェーをバス停2つ分約10分歩いて、摩耶山天上寺前につく。門を入ると孝徳天皇勅願寺の石柱が立っている。長い石段の参道を上ると、右手に花山天皇勅願所、左手に正親町天皇勅願所の石柱が立っている門がある。ここから中が境内になっている。右手に社務所、左手に鐘楼がある。石畳を伝って正面に摩耶婦人堂、その左手が本堂(金堂)で愛染明王はこの堂の正面に七体の彩色観音像と共に祀られている。
摩耶夫人堂にはお釈迦様の生母と言われる摩耶夫人尊が祀られている。女性のあらゆる難病や苦しみを救い給う女尊で、女人守護のお寺として女性の信仰を集めている。折からの深まる秋に摩耶山上では紅葉が美しく色づいていた。
神戸市中央区再度山1 地図
アクセス
三宮駅前そごう東側から市バス25系統森林植物園行きで20分、バス停大龍寺山門前下車、徒歩すぐ
大龍寺はぼけ封じ近畿十楽観音霊場の第八番の札所でもある。
神戸市須磨区須磨寺町4−2−28 地図
アクセス
山陽電鉄須磨寺駅下車、徒歩で北へ約5分
改札を出てすぐに左折して北西の方向に400m程行く。途中、信号のある交差点を渡ってそのまま真直ぐで須磨寺の仁王門に到着する。仁王門の手前に朱く塗られた龍華橋があり、その手前左手に須磨寺の塔頭の一つである正覚院がある。入口は左右に石柱が立っているだけの簡単なもので、右手の石柱に、須磨寺正覚院とかいてある。
お堂は唯一つあるだけで、お堂の右側にご朱印を受け付けるインターホンがある。来訪の意思を伝えてご朱印を受ける。堂の正面はガラスの嵌った格子戸が閉まっていて、そのガラス越しに愛染明王様を拝んで賽銭を入れてきた。揚げられている額に書かれた文字が読めなくて、ご朱印を受けたときに尋ねると、「愛染明王」と崩した文字で書かれていると教えられた。相当に崩した文字で説明を受けないと、明王だけが判別できるのみである。
龍華橋を渡り仁王門をくぐって須磨寺にも参詣して帰ることにした。
第七番 恵龍山大聖寺(あじさい寺) 平成19年1月13日訪問
岡山県英田郡作東町大聖寺5 地図
アクセス JR姫新線佐用駅、江見駅、または上月駅下車、タクシーで15分。神姫バス「豆田」下車、徒歩40分
車を運転しない私には今までに訪れた寺の中でも相当不便なところでありました。バス便が少なくて不便であるとか、バス便が無くても歩けば何とか行けるのであればよいのですが、大聖寺に行くにはバスを降りてからでも40分と案内に出ている。今日は、智頭急行の電車を利用して佐用駅(JR駅と同じところ)からタクシーを利用。15分は殆ど信号の無いところを正味走るので、メーターが相当上がる、これを往復するわけだから、もし、交通機関を利用して訪問される方は、神姫バスに乗って徒歩40分を選択されたほうがよい。
山門前に大きなイチョウの木が並んで2本あって、武蔵が沢庵和尚にとらえられて大木の梢につるされた千年杉のモデルになった木だそうです。木の傍には武蔵とお通の旅姿の銅像が建っている。山門の右脇に鐘楼があり、更にその傍に小さな門がある。こちらは坂道になっている。山門へは10段ばかりの階段を上る。空破風の屋根がかけられた小ぶりな門であるが、右に鐘楼、左に蔵用の建物を従えた造りになっていて、趣のある建物です。
山門をくぐると正面に本坊客殿があり、この建物の左側の部分は400年の歴史のある古いもので、ここに愛染明王が祀られているが、秘仏で厨子の扉は閉ざされている。次のご開帳は’24年3月27日ということです。本坊に上がってお茶を頂きながら暫しのあいだ、庭と部屋の中を見せていただきました。
本坊を出たすぐ右手にぼけ封じ観音が立っていて、その傍に88段の厄除け階段があり観音堂に上がるようになっている。身の丈2m50cmあるという如意輪観音様は堂内に祀られ、いつでも奉拝することができます。観音堂の奥に通じている道を下ってくれば、途中に3重の塔を見ながら、門前の広場のあたりに出る。
このお寺の本堂は、少し離れた場所に不動院として、ご本尊の不動明王をお祀りしてあります。
第十番 九関山宝蔵寺地蔵院(関の地蔵) 平成18年11月25日訪問
三重県鈴鹿郡関町新所1173−2 地図
アクセス JR関西本線の関駅下車、駅前の国道1号線を渡り北へ300m程行く、関宿の町並みを西に約500m
関宿は東海道の47番目の宿場町である。今日の関町訪問の目的は地蔵院へ参ってご朱印を頂くことであったが、江戸時代の宿場町の様子を髣髴とさせる町並みを見て、すっかり目的が逆転してしまった。関町のことは下調べをしていたから、大体の予想は出来ていたが、街を歩くほどに、空気に触れるほどに江戸時代にタイムスリップしてゆく。連子格子のはまっている出窓、漆喰で塗りこめた背の低い二階の壁、そこに設けられた虫籠窓(むしこまど)、屋根の上に上げられた漆喰細工、軒がわらの文様などなど、保存された町並み(全国伝統的建造物群保存地区)が1.8km続いている。
関の地蔵は、この町並みの西よりにある。関の町もすばらしいが、重要文化財を3つ残している地蔵院もまたすばらしい文化遺産である。現在の本堂は、1700年に4度目となる築造で今に伝わっている、国の重要文化財で、天井の格子174枚に描かれた絵は見事です。本堂横の愛染堂に愛染明王が祀られている。厨子に納められていて秘仏である。毎年8月26日の愛染祭りの日に御開帳される。納めてある厨子は太閤秀吉の寄進による立派なものです。
500円に拝観料を払うと、本堂はもちろん愛染堂、書院、行在所などお寺の建物の中まで見て回ることが出来る。行在所には明治天皇をはじめ江戸時代には諸国の大名や公卿がご休息を取られたところでもsる。そこにある襖絵、襖への書など、本当に傍によって拝観できる。
書院の縁側に造られている庭園には、心字池、樹齢を重ねた樹木、燃えるように真っ赤に紅葉した楓、黄色く色づいた木々など、池には悠然と鯉が泳いでいる。この庭園は、書院の2階の窓から見ると、景色を額の中に切り取ったように見ることが出来る。また、訪れてみたい関の宿でありました。
三重県伊賀市上野農人町354 地図
アクセス 近鉄伊賀線広小路駅下車、徒歩3分
近鉄電車の大阪線を伊賀神戸駅で伊賀線に乗り換えて広小路駅で降りる。東へ歩き3つ目の辻を北に折れると、愛染院がある。道路に面して山門がある。門に向かって右の石碑には芭蕉翁故郷塚、左側の石柱には史跡芭蕉翁故郷塚と彫られている。石畳を踏んで正面に本堂があり、ここに愛染明王が祀られている。扉は締め切ってあるので直接拝観できない。
本堂の横には茅葺の屋根をかけたくぐり門があり、故郷塚の額が揚がっている。門の外から中を眺めただけであるから、どのような形で故郷塚が設えてあるのか分からない。境内には、芭蕉の句碑があるのと、子安弘法大師の銅像、小さな祠、13重の石塔などがあるだけの小さなお寺。境内にひっそりと頼り気なく咲く紫式部の花の色が寂しく思われた。
伊賀上野には今までにも4度ばかり訪れてはいるが、もっとゆっくりと時間をかけて来たいとの思いを残して、帰らなければ成らない。今日も、次に行く関町の時間が気になって、ご朱印を受けたらそそくさと上野を後にする。
第十二番 天王山久修園院(釈迦堂) 平成18年11月11日訪問
大阪府枚方市楠葉中之芝2丁目46 地図
アクセス 京阪電鉄橋本駅下車、駅の東側の道を南へ徒歩5〜6分です。
お寺へはガソリンスタンドの前から道を渡って入れるが、ここは寺の勝手口になっていて、インターフォンで訪問の意を伝えなければならない。伽藍配置図(上が南)で見るように山門は寺の西側にあり、こちらへは寺の西側を南北に通る小さな道を東に入ることになる。愛染堂、本堂(釈迦殿)土蔵、鐘楼、庫裏、霊亀社などが、狭い境内に配置されている。光明殿は近年に建てられたものです。
「久修園院は塔頭の一つです」とお寺の大黒様からお聞きしたので調べてみました。行基菩薩が創建した天王山木津寺の塔頭であるようです。戦乱で焼けてしまった今の久修園院を中興したのは宗覚律師だそうです。本堂には本尊の釈迦如来立像が祀られていて釈迦殿(額が掲げてある)とも呼ばれている。愛染堂には愛染明王座像が奉安されています。
奈良県奈良市西大寺芝町1−1−5 地図
アクセス 近鉄西大寺駅下車、南出口より徒歩約3分
西大寺駅は北口がメインの出口となっている。西大寺さんは南口を降りて徒歩ですぐのところにある。真言律宗の総本山で東の東大寺に対する西の大寺にふさわしいお寺であった。興正菩薩叡尊によって中興されていまの西大寺として残っている。
境内には本堂、四王堂、愛染堂、東塔跡などがある。愛染明王は秘仏で普段は開扉されていない。大きな厨子の前に一際小さな厨子が置かれ御前立ちの愛染明王が納めてある。秘仏の明王様は厨子は大きいけれど御前立ちとそれほど大きさは変りませんとお聞きしました。わずか1尺程の仏様です。秘仏開扉は毎年正倉院展に併せて行われるようです。本堂には本尊として釈迦如来立像が奉られていて、当寺は大和十三佛の第二番霊場ともなっている。四王堂には、多聞天、広目天、増長天、持国天の四天王の金銅のほか多くの仏像があり、本堂、愛染堂のそれらを合わせると多くの重要文化大を擁している。
ここまで来たついでに少し足をのいばして、秋篠寺まで行ってきました。秋篠寺の本堂は国宝とのことです。
西大寺山門 |
愛染堂 |
本堂 |
本堂 大和十三仏霊場2番 |
第十四番 生駒山宝山寺(生駒さん) 平成18年12月16日訪問
奈良県生駒市門前町1−1 地図
アクセス 近鉄生駒駅下車、鳥居前駅からケーブル線に乗り換えて宝山寺下車、徒歩10分
生駒駅前からのケーブルカーは、観光地にある山登りの代わりに利用する観光用のものと少し様子が違う。傾斜がそれ程急でないこと、複線(上下で4車両が運行する)になっていること、途中に踏切が何箇所かあること、線路の傍を走る道路があったり、すぐ近くに人家があること(中には家の裏を通過するところもある。)、遅い時間まで運転されていることなど。
宝山寺駅で乗り換えて生駒山頂域のケーブルがあるが、宝山寺へはここでケーブルを降りる。駅を出てしばらく行くと、宝山寺に通じる観光ルート(旅館、食事処、みやげ物店が並ぶ)と民家の中を通るルートがある。どちらも勾配の急な坂道になっていて、所々に2〜5,6段の階段との組あわせの道になっている。寺域につくとそこからがまた、両側に寄進された灯篭がずらりと並ぶ階段になっている。
階段を上りきったところから更に惣門をくぐり上へ上へと、山城の本丸を目指すような格好で、奥の院まで階段が続く。途中に彩色も鮮やかな多宝塔があり、第14番の愛染明王が祀られています。正面扉が開かれていて間近にお姿を見てお参りが出来る。先に来てお参りしているご婦人がお経を唱えその後に御真言を唱えて丁寧にお参りされていました。しばし待つ間に本堂のある寺域を見下ろして写真にとりました。このお寺には沢山のお堂があって、この多宝塔から更に上って奥の院に至ります。
奥の院までの道は緩い石段になっている、本堂から登ってくる道も同じように緩い階段を形成していて、その両側にお地蔵様が並んでいる。1円玉を袋に入れた子供が親に連れられて、せっせとお賽銭を置いて回っていました。
奥の院には、奥の院の本堂、開山堂、大黒堂の諸堂があります。