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康 楽 館 芝居小屋設備:
 回り舞台・奈落・迫上り・スッポン・花道・仮花道・ロクロ・枡席・桟敷席
 大向こう席・鳥屋・鳥屋道
文化財指定:国の重要文化財  創建年:1910年(明治43年) 
所在地 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字松の下2                 訪問 平成21年9月10日    地図
JR花輪線十和田南駅下車バス約25分
 康楽館全景日本最古の芝居小屋を自認している。しかし、実は金丸座(琴平)、永楽館(出石)などの方がもう少し古い。八千代座(山鹿)も同じ年に建築されている。そういう意味では、日本最古のという表現が当たらないが、日本最古の芝居小屋というには納得がいくことがある。というのは、基本的にはほぼ毎日のように芝居興行があって、まさしく今も芝居小屋として息づいている。
 明治43年(1910年)に小坂鉱山の厚生施設として誕生した。炭鉱の町に建てられた嘉穂劇場とその経緯が同じでだろうと思う。その後、昭和45年(1970年)に建物の老朽化とテレビの普及が、芝居小屋を閉館に追いやることになったが、昭和61年(1986年)に建物が県指定の有形文化財に指定されたのを機に再開館して現在にいたっている。平成14年には国の重要文化財に指定された。 

 康楽館がある秋田県鹿角郡小坂町は、明治期から大正にかけて鉱山町として大いに栄えた。その繁栄のあとを町並みを整備し、明治百年通りという通りにこの康楽館をはじめレトロな街並みを作っている。劇場に至る道には沢山の幡が立ち並んでいて、観劇の客が毎日大勢訪れる。一日に2回の公演をしています。私のように、芝居小屋を見学に来る訪問客はむしろ稀なところです。
 館内の見学は、歌舞伎大芝居などの特別な公演がある日と、年末年始の休館日以外に可能である。見学には館の職員が案内してくれる。公演がある日は楽屋裏は撮影禁止で、舞台の上には上がることもなく、袖の方から眺めるだけになる。他の芝居小屋の見学のように、館内を自由に行き来しながら写真を撮るという自由が束縛されている。    

建物正面に設けられた入場券売場和洋折衷
 下見板張りの洋風な白を基調にした外観が特徴で、大きな切妻屋根の左右に寄せ棟屋根の部屋を突きだして付けていて、変化に富む構造になっています。切妻屋根の軒には鋸の刃のような飾りが付けられている。破風の部分には横長の明かりとりの小窓が付いています。
 建物中央の入場券売場は8角形の形状をしていて、建物の外側にその内の5面を見せている。1階の軒には、波型の飾りが付いています。窓は木製の上げ下げ窓で意匠を凝らしたものになっています。
 建物内部の造りは、桟敷、花道、切り穴(スッポン)、奈落、回り舞台、楽屋などは、日本の伝統色を残した江戸期の芝居小屋の造りになっています。天井には洋風の照明器具が据えられていて、建物全体が和洋の混じり合った見事なバランスをなしています。 

廻り舞台と装置
 廻り舞台は9.73mあります。これを奈落の下で4人の人力で回転させると聞きました。これだけ大きな舞台に、舞台装置と役者が載っているときに、本当に4人で回していたのか疑問が残りました。舞台の回転装置は芝居小屋毎にそれぞれ違っていますが康楽館の場合、使われている部材だけでも結構な造りになっています。
 花道にあがる切り穴(スッポン)は滑車を3連にしたもので、担ぎ棒を担ぎあげる代わりに前後の2か所をロープを引っ張って持ちあげる仕組みを採用しています。康楽館で初めて担ぎあげでない方式を見ました。

花道から鳥屋
 花道は本花道と仮花道が設けられています。これとは別に舞台中央から向こう席に向かってと、本花道と仮花道に交差するような形で渡り道が付いています。この通路は、観客が桟敷席に入るために考慮されたもので、内子座の枡席にも付けられています。
 鳥屋には鳥屋道への降り口がありましたが、降り口が鳥屋の大部分を占めていました。

2階の大向こう席舞台裏の楽屋
 楽屋の見学はできましたが、公演中のため撮影禁止でした。公演のない日であれば撮影が許されるのでしょうか。確認してくるのを忘れました。この、康楽館の楽屋には、過去に出演された役者さんの落書きが板壁、板戸などに一杯あります。その様子を写真に撮ることができませんでした。        

桟敷、客席
 1階の平場の席はゆっくりと勾配が付いていて、舞台から遠ざかっても見やすいような配慮がなされています。鳥屋と反対側の脇には検番が設けられている。この検番は他の芝居小屋でも見られるものです。
 2階の大向こう席は5段にもなっていて、最後列の5段目は天井がすぐ上に迫っています。文字通りの天井桟敷です。2階席の手摺には溝が掘ってあって、ここに下足を置くようになっていると聞きましたが、2階席の全員の分を収納できるのか疑問です。それに、間違えて下に落とすと危険ではないかと思います。本当に下足を収納するための場所なのでしょうか。

康楽館正面の切妻 スッポンの巻き上げ滑車 回り舞台装置
2階から1階席を見た 2階席への階段 2階席の手摺りは下足置き場
仮花道と桟敷席 鳥屋から鳥屋道(奈落)への降り口 フロントと券売所
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