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杭全神社 御田植神事
杭全神社 大阪市平野区平野宮町2丁目1−67   JR大和路線「平野駅」から徒歩約7分   訪問日 '11/04/13
 
 御田植神事には、住吉大社の御田植祭にみるように、実際の田に田植えをするものと、ここ杭全神社で行なわれるような、模擬的な農耕の所作を演じるものに大別される。
 そもそも田植え祭りは、平安時代の昔から、田楽の伴奏で田植えをした名残で、芸能祭に近いものが多い。田植えの所作であっても、実際の田植えであっても、神事そのものの流れの中には、謡いや囃子、舞いが取り入れられ、演者の装束にしても芸能的なものが色濃く出ている。

御田植神事4月13日 杭全神社の御田植祭りでは、田植えに関する所作を、拝殿の舞台を田に見立てて、その作業を手順に従って行なう。拝殿に対峙する本殿は、第一殿、第二殿、第三殿の3棟がありいずれも国の重要文化財に指定されている。

 拝殿は、西側に参拝者が着座するための場所が、向かって東側には神官などが着座する控えの場所が設けてあり、中央に神事を執り行う舞台がある。縁者の控える場所には、牛が引く鋤、田均し棒、鍬などの農耕用の道具が準備れています。

 これらの道具は、古くから伝わっているもので、牛頭面は天和2年(1682)、鋤、田均し棒、鍬などは宝永8年(1711)、早乙女の菅笠は宝暦5年(1755)と云う由緒のあるものです。最近になって文化財の保存のために、これらの道具はレプリカを作って、それを使用するようになったということです。

 開演の14時になると、神官、宮司、演者(シテ、地方、早乙女など)が拝殿に着座します。最初に神官の祝詞の奏上があって、祓い清めを行ないます。向き直って参拝者にも御幣を振って清めをします。続いて、宮司が本殿に赴き、供物の献上をしたあと、祝詞の奏上と玉串の奉納を行います。

 神事で使われる小道具類いよいよ、演者による田植え神事の儀式が始まります。それに先立ち、小道具などの準備が始まります。本殿から遠い南側に、地方と呼ばれる囃し方が着座するための円座が5つ置かれます。本殿に近い側に、儀式の中で使用される桶ともっそう飯が置かれる。牛を演じる演者に牛頭面と云う牛の頭に見立てた被り物が着けられます。
 先ず、能装束に翁の面をつけたシテが鍬を担いで登場します。ついで5人の地方がシテに続き、用意された円座に着きます。シテの口上と地方の口上が、田植えの行程に合わせて厳かに進行してゆきます。

 シテ「今日は当社権現のお田植えにて候。めでたく御田を植えようと存ずる。
    世の中良ければ、ほながの(じょう)もたーれたれ。」
 地方(じかた)大柑子(だいこうじ)を二つ並べて、福の種を蒔こうよ。」
 シテ「さあらば、明きの方(その年の恵方)を向かいて鍬初めを致そう。やあえい、
    一鍬打てば和泉諸白の香がほっこりとする。」
 地方「呑みたし呑みたし。」

 このようなやり取りが続いて、シテが田を耕す所作、田の水口をを切る所作をする。このあとシテが脇に下がって鋤をつけた牛を引き連れて出てくる。そして田を鋤ながら拝殿を廻る。牛は牛頭面を受けた人が演じている。
 牛が舞台の袖の下がると、次に、田均し棒を担いでシテが登場して、田均しの所作をする。ついで、籾桶を持って登場して、「和泉の国いちもり長者の福の種を蒔こうよ」、「河内の国の松浦長者の福の種を蒔こうよ」、「大和の国のぜぜなげ長者の福の種を蒔こうよ」、「当所も蒔こうよ、宮の前も蒔こうよ、当所も蒔こうよ」と謡いながら四方に籾を蒔く。このときは所作だけでなく、実際に籾を拝殿に撒き散らす。
 儀式のあとに見学者がこの籾を拾い集めて持ち帰ることが出来る。財布に入れてお守りにする。

 田植えの所作の他に、杭全神社の御田植神事には風変わりな所作が演じられる。

 地方、シテが一旦脇に退いたあとで、シテが拝殿の隅に着き「太郎坊やーい、次朗坊やーい。太郎、次朗やーい、次朗、太郎やーい」と扇で招く。赤子に見立てた人形を背負う男性と、早乙女が二人登場する。早乙女の1人が、男性の背負っている人形を引き取ってシテに手渡す。
 これを受け取ったシテが神前の方に歩み寄って、用意されている「もっそう飯」を人形に三度食べさせる仕草をし、放尿をさせる。このあと、人形を男性に背負わせて、2人の早乙女が一緒になって3人で、本殿に向かって田植えの所作を三度繰り返す。
 約1時間くらいの時間を要して神事が終了します。 

宮司が本殿に供物を献上する 地方5人が着座 鍬を持ったシテ
牛頭面を着けた牛(拡大写真) 田均しの所作 籾を蒔く
早乙女と人形を背負った男子 人形を受け取る早乙女 もっそう飯と放尿させる桶
人形に放尿させている 神前(本殿)に向かって田植えの所作 田植えの所作は3度繰り返す
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