駅前の道を真っ直ぐに東に歩く、4つ目の信号を右に折れると、最初の4つ辻に「黒石市中町伝統的建造物群保存地区」の表示が建っています。この先の約250mほどが選定されている地域です。道路の両側に残る建物と、この町の伝統的建造物である「こみせ」が続きます。
「こみせ」は雪国に特有な木製のアーケードで、住宅の前に軒を張り出して作った屋根付きの通路です。夏は暑い日差しを遮り、冬は吹雪や積雪から人を守り、軒を連ねる商家にとってはなくてはならないものであったようです。こみせの幅は約1.6mくらいある。こみせは通路でありながら各家屋の私有地の一部なのです。
越後地方などでは「雁木」と呼ばれているものがそれにあたります。
こみせ通り
黒石の町は雪国に独特な建築様式である雁木造りの町並みが見られます。雁木という言葉の方がよく知れるところなのですが、津軽地方ではこれを「こみせ」と呼んでいます。この「こみせ」が比較的当時のままに残された地域を、こみせ通りとして整備保存している。「こみせ」の連続性が雪国の地方の面影をよく残しています。
形こそ現在風になっているけれども、こみせを持った建物は、この中町通りのほか、横町通りなどにも見かけます。
高橋家住宅
宝暦13年(1763年)ごろ建造の津軽地方に典型的な商家で、国の重要文化財に指定されている。木造平屋建て一部二階建てで、片側切り妻と片側妻入りの鉄板葺きの屋根を持っている。建物の前面には風雪を防ぐ「こみせ」が付属している。屋号を米屋と云い主にコメを扱う商家であった。
現在は土間の一角を開放して喫茶店をしており、こみせ通りを眺めながら一服できる。
鳴海家住宅
重伝建地区の南の端、中町通り(こみせ通り)と横町通りの交差するところにあります。高橋住宅とは中町通りを挟んだ向かい側にあります。鳴海家は造り酒屋で、文化3年(1806年)の創業ですが、建物はそれ以前からのもので、築200年以上経っといわれます。広大な敷地は、中町から一つ東側の浦町通りにまたがっている。母屋の奥には、酒造店としての作業場や蔵などがあり、その様子が、南側の横町通りに母屋に続く蔵の側面を見せています。市の指定文化財になっています。
中村亀吉酒造
鳴海家住宅と同じ通りの少し北側に建っています。軒に大きな酒林が目につきます。直径2.1m、重さが1.5tもあって日本一の大きさです。NHK大河ドラマ「いのち」の舞台ともなったところです。
伝建地区外の建築物
伝建地区は、仲町のこみせ通りの250mくらいの限られた地域ですが、蔵を改造して商店とした山田肥料店、名勝に指定されている「金平成園」、九戸家住宅主屋(国の登録有形文化財)などが点在しています。
市消防団第三分団第三消防部屯所は、大正12年(1924年)に建築された望楼付き木造2階建ての消防屯所。この第3分団の屯所は、中町通りを甲徳兵衛町通りに少し入ったところにあります。近代的な消防自動車の配備に合わせて、建物の一部を改装してありますが、2層の切妻屋根の上の望楼に、当時の面影を留めています。望楼部分も含めて5層の建物になっている。
市内にはあと5ヶ所の消防屯所があるとのことです。第3分団の屯所は県の有形文化財の指定を受けています。
黒石市は、弘前藩から分知した黒石津軽家5千石の陣屋町として発展してたところでもあります。陣屋跡地は、伝建地区の南西200mくらいにある市民文化会館の敷地となっているところです。九戸家住宅主屋は、津軽家14代津軽承捷の生家です。
文化年間(1804〜18)に建てられた建物で、現在の甲大工町のほぼ中央にあたり、江戸時代は、陣屋の中にある侍町であったところです。建物は、木造の平屋建、屋根は茅葺の寄棟造で、外観は漆喰壁になっています。
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