町並を訪問するときに目にし、耳にする言葉 |
町並みを訪問するときに、関連するガイドブックを読んだり、現地で入手するパンフレッドなどに触れる機会が多い。また、色々な機会を通して、耳にする情報もある。 そんな中に、日常の会話には出てきそうにもない独特な用語もあれば、なじみの薄い用語などもある。中には懐かしく感じる用語もあるかも知れない。 このような用語は一般の辞典には載っていないものがあり、説明があっても町並を観賞するためには説明が物足りないものもあります。 ここにはそれらの用語を集めて、町並観賞に少しでも役に立つものを作ってみたいと思っています。 |
町並の分類 町並の用語 |
町 並 | 説 明 | 代表例 |
社寺を中心とした町並み | ||
寺内町 | 室町時代に真宗などの寺院・道場(御坊)を中心に形成された自治集落のこと。濠や土塀で囲まれるなど防御的性格を持ち、信者、商工業者等が集住した。 | 橿原市今井町 富田林市富田林 |
里坊群 | 大津市坂本 | |
社家町 | 特定の神社の神職を世襲してきた家を社家と呼び、社家はその神社の近くに居を構えることが多く、社家が集まり住んだところを社家町と呼ぶ。 | 京都市上賀茂 |
門前町 | 有力な寺院・神社の周辺に、参拝客を相手にする商工業者が集まることによって形成された町のこと。広義には、寺院・神社の信徒が近隣に集落を形成した寺内町・社家町も含めて門前町という。 | 京都市 嵯峨鳥居本 |
武家を中心とした町並み | ||
武家町 | 武家が居住する武家屋敷が集まってできた町、現代では武士が居住する侍屋敷が集まった町(侍町)を指すことも多い。 | 仙北市角館 鹿児島県知覧町 |
城下町 | 城とそれを取り巻く商家、武家屋敷などが併せて発達した町。城の防衛施設としての機能と、行政都市・商業都市としての機能を持つている。町割りは城を中心に、侍町、町人、寺町などが配された。侍町とは、家臣の屋敷いわゆる侍屋敷が建ち並ぶ町であり、身分の高い家臣ほど、城に近い位置に屋敷を持った。 | 篠山市篠山 豊岡市出石 |
陣屋町 | 陣屋または代官所を中心に形成された町。侍屋敷が建ち並び、また陣屋に関わる武士等を相手に商売を営む商工業者が集まり発展した町。 ここで云う陣屋は、江戸時代の幕藩体制における、大名領(藩)の藩庁が置かれた屋敷で、おおむね3万石以下の城を持たない小大名が屋敷として設けた。代官所は、天領に置かれた藩庁にあたる。 |
岐阜県高山市 八軒町一丁目 |
商家の町並み | ||
商家町 | 川越市川越 柳井市古市金谷 |
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在郷町 | 町の中心となる施設、例えば城郭・宿場・有力寺社などがなく近在の町から隔たった地区において自然発生的にできた町。 | 筑後吉井 今井町 |
宿場の町並み | ||
宿場町 | 主に江戸時代の五街道や脇街道・脇道において駅逓事務を取扱うため設定された町で、問屋場、宿泊施設としての本陣、脇本陣、旅籠、木賃宿を置き、警護のための枡形、高札場などの設備を備えている。人が行きかうために商店、茶屋などの店もあった。 | 南木曽町妻籠宿 亀山市関宿 |
講中宿 | 山梨県早川町 赤沢 |
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産業と結びついた町並み | ||
鉱山町 | 鉱業資源の採掘の町として発展した。 | 高梁市吹屋 太田市大森銀山 |
工業町 | 各種製品の製造業を中心に栄えた町。製塩の竹原、製蝋の内子、醸造の湯浅、製陶の多治見など | 竹原市竹原 内子町 |
農水産町 | 農業産品を業として栄えた町。養蚕業の海野宿など | 東部町海野宿 |
集落 | ||
山村集落 | 白川村荻町 美山町北 |
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農村集落 | ||
漁村の集落 | 京都府伊根町 | |
島の集落 | ||
茶屋の町並み | ||
茶屋町 | 京都市祇園新橋 | |
港湾と結びついた町並み | ||
港町 | 福山市鞆 神戸市北野 |
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温泉と結びついた町並み | ||
温泉街 | 温泉津温泉 銀山温泉 |
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あ行・か行・さ行・た行・な行・は行・ま行・や行・ら行・わ行 | |
用 語 | 用語解説 |
間宿(あいのしゅく) | 間宿は宿場間の距離が長い場合や、その間が難路の場合に、途中の休憩のために置かれた茶屋や立場などが発達して集落を形成したもの。(例)有松 |
揚げ店 | 框の大きい板戸風の台の一方を蝶番などによって家屋の外部にとりつけ板の部分を水平に倒して折り畳みの脚を立てて用いる装置。縁台、帳場、陳列台などの役割を果たす。上げ床机(しょうぎ)ともいう。ばったり床几などともいう。 |
あて曲げ(の道) | 直交する2つの道路をわずかに(半間くらい)ずらすことで、遠方がまっすぐに見通せない構造にして道をつける。(類)枡形 |
荒格子 | べかこ窓、鴨居の外に連子板を打ち、内側に連子板を組んだ戸を入れた窓。戸の移動によって開閉する。「無双」とも「無双連子窓」とも「無双戸」ともいう。 |
庵看板 | 瓦屋根を持った看板で屋根の上に立てられたもの。屋根看板とも呼ばれて商家に必須のもの。 |
居蔵造り | |
石置き屋根 | 葺いた屋根材などが動かないように石で押さえたもの |
板のれん | 幕板のような感じのもの(富田林木口家住宅の例) |
板葺き | 屋根を葺く材料に薄板を使ってある家屋 (類)茅葺き、瓦葺き、檜皮葺きなど |
犬矢来 | 通りに面した格子の前などにめぐらせた竹を曲げて造った囲い。塀や建物の足元を保護するためにある。犬走りとも言う。(類)駒寄せ |
入母屋造 | 屋根の形式。寄棟の上の部分が切妻屋根になっている形。屋根の間に出来る三角形の壁面を入母屋破風と呼ぶ。(類)切妻造・寄棟造 |
入母屋破風 | 入母屋屋根の妻側の形状。(類)切妻破風 |
卯建(うだつ) | 本卯建、袖卯建を参照 |
エグネ | 雪国に見られる屋敷林のこと。風雪を凌ぐために屋敷の北側と西側に植えられる。岩手県奥州市の胆沢区に散居村などにみられる。(類)キズマ |
大壁造り | 柱などが表に出ないように壁で覆ってしまうようにしたもの。土蔵造りや塗や造りにみられる。→真壁造り |
大戸 | 頑丈な板戸で出来ている出入り口の戸のこと。通常の出入りは大戸の一角に設けたくぐり戸が利用される。→引き上げ大戸 |
お茶屋 | 芸妓を呼んで遊興する場を提供する店のことで、お座敷と云う部屋を客に提供する。ここでは料理などは自らのものを出すのではなく、仕出し屋からとることで料亭とは区別される。宿場のおける茶屋とは別のものである。 |
表屋造り | 町家で表通りに店を構えて、奥に居室棟を持った造りで、間に中庭を設けてある。 |
親子格子 | 出窓格子などにおいて上部のみ竪子を間引いて、建物の内部から戸外が見えるようにした格子。(富田林葛原家住宅の例) |
外城 | 要害を参照。(類)要害 |
カイニョ(垣繞) | 垣のようにめぐらせた樹木。屋敷林。砺波の散居村に見られるもの。(類)エグネ |
かぐじ | 津軽弁で家の後ろの曲がった通路という意味。黒石市の重伝建地区にかぐじを整備して見せているかぐじ広場がある。 |
かぐら建て | 切妻妻入りの家屋の前面に片流れの2階建てを接続して、平入り形式のように見せた造り。福井県坂井市三国町に見られる家屋形式 |
河港(川港) | 河口または河岸にある港。 |
加宿 | 江戸時代、人家が少なくて人馬を出しにくい宿駅では、地続きの一、二の隣村をこれに加えて宿場の用を勤めさせたところ。(類)助郷 |
合掌造り | 民家の建築様式の一つで、巨大な合掌を小屋組みとするもの。切妻造りあるいは入母屋造りでになっている。 |
がったり | 街道を往来する人々が背中の荷を置いて休んだり、商いが行なわれたりしました。普段は折り畳まれています。 |
華頭窓 | 寺社建築・城郭建築などに見られる、上枠を火炎形または花形に造った特殊な窓。住宅の書院などにも採用する。火灯窓、花頭窓などと表記することもある。 |
矩折(かねおり) | 街道を遠くから見通すことが出来ないようにしたところ。枡形とも言う。(同)枡形 |
曲尺手(かねんて) | 街道が鉤の手に曲っているところ。大工が使う曲尺に似ているところから曲尺手と呼ぶ。主に遠州や尾張で呼ばれることが多い。(同)枡形 |
川端(かばた) | 琵琶湖の湖西針江の町に湧き水を各家庭に引き入れて利用する水場がある。他の地方でかわとと呼ばれる。(同)かわと |
兜造り | 妻側に二段以上の庇をつけ、その破風の形が兜に似ていることから兜造りといわれる。 |
茅葺 | 屋根を葺く材料に茅を使ってある家屋。カヤにはススキ、チガヤなどがある。(類)藁葺、草葺、檜皮葺き、瓦葺き、板葺きなど |
唐破風 | 中央部を凸形に、両端部を凹形の曲線状にした破風。玄関や門、神社の向拝(こうはい)などに用いられる。→千鳥破風 |
蕪懸魚 | 懸魚のデザインの一つで、野菜の蕪(かぶ)の形状と似ているところから付いた名称。懸魚の中では最も一般的な形で、鱗目と呼ばれる縞模様と、胴の部分がずん ぐりして渦巻きのある形状が特徴です。 |
カリヤ | 雪国で、通りに面して民家の軒先から庇を長く出して、その下を通路にしたもの。(同)こみせ、雁木 |
かわと | 家の前に流れる川を利用するために、各戸に設けた水場。かっては洗いもの、時には飲料にも用いた。 |
雁木 | 雪国で、通りに面して民家の軒先から庇を長く出して、その下を通路にしたもの。(同)こみせ、カリヤ |
環濠 | 集落の周囲にめぐらせた堀のこと、防衛のはか排水、境界などの機能を持つ。今井町にその名残を残す。空堀をめぐらせたものは環壕と書く。 |
環濠都市 | 環濠を巡らして町が独立した地域を形成した都市。規模が小さい場合は環濠集落と呼ばれる。 |
貫目改所 | 江戸幕府が街道往来の荷物を検査するために宿場の問屋場に置いた機関。規定を超えた荷物には割り増し金を徴収するなど、伝馬役に加重な負担がかからないようにするための警察的な役割を担った。東海道の品川宿・府中宿・草津宿と中山道の板橋宿・洗馬宿におかれた。 |
キズマ | 風雪を凌ぐ屋敷林の足元の枝のない部分を補うために、薪を積み上げて塀状にしたもの。(類)エグネ |
北前船 | |
木賃宿 | 一般の旅行者が宿泊するところには旅籠屋と木賃宿がありました。旅籠屋と木賃宿との違いは、食事が付いているか付いていないかの違いです。木賃宿という言葉は安い宿と言う意味で昭和に入っても使用されていました。因みに、木賃とは素泊まりの客が、煮炊きなどのための薪代として宿に支払う金銭(木賃)を表わしている。→旅籠 |
木戸 | 宿場の端(見附付近)に設けられ、木戸と木戸の間が宿場町とされた。木戸の他に常夜灯が設置されている場合もあった。また殆どの場合、夜間は防犯等の目的で閉鎖されていた。 |
気抜き | 屋内から煙を排出する目的で棟の上にかけられる越屋根を、目的を屋内の換気を調整するように利用しているもの。板戸をつけて開閉を行い室内の温度調節が出来た。養蚕業で栄えた本海野宿に見られる。(類)煙り出し |
肝煎 | 名主の項参照 |
切妻 | 最も簡単な屋根の形式。軒先側を平側、三角形の壁の方を妻側と呼ぶ。 |
切妻破風 | 破風とは屋根の妻側にある三角形の外壁部分のことで、切妻屋根の場合を切妻破風と呼ぶ。(類)入母屋破風 破風に装飾的な形式を持たせた屋根にかけることがある。(類)千鳥破風・唐破風 |
下り懸魚(くだりげぎょ) | 平軒桁の両端を風雨から守るために装飾をつけた板を取り付けたもの。通常の懸魚の位置からして軒先の下ったところに取り付けたものである。由比宿に見られる。 |
口留番所 | 江戸時代、諸藩が境界や要所に設けた見張り所。人や物資の流出入を統制した。 |
くど造り | 佐賀県平野部に見られる民家の形式で、草葺きの棟がコの字形をしている。かまどのある土間の棟と主屋と別棟にコの字形に繋いだ建て方。(例)川打家住宅 |
黒漆喰 | 漆喰に墨を練り込んで黒く仕上げた漆喰壁。(類)ねずみ漆喰 |
懸魚(げぎょ) | 棟木または、桁の端を風雨から守るために取付ける装飾的な彫刻などを施した板のこと。その形状によって、蕪、猪目、雁股懸魚などの種類がある。 |
桁行(けたゆき) | 建物の棟に平行な方向。または建物の桁行方向の長さ。→梁行 |
結界格子 | 駒寄せのことを京都ではこう呼ぶ。 |
煙り出し | 囲炉裏や竈などで燃料を燃やしたときに出る煙を、屋外に排出するために棟をまたいでつくる小屋根。煙り出しの型式としては棟に直角に着くこともあ。軒をまたがない型式のものが竹原市の惟清邸に見られる。(類)越屋根 |
懸崖造り | 崖地を利用して建物を建てるものをこう呼ぶ。ある入口においては1階を構成しているが、崖下の土地から見た場合に、2階、3階になっている。(例)伊勢古市町の麻吉旅館 |
郷蔵 | 年貢米を領主におさめるまでの一時的な保管用の倉庫。庄屋などの持ち蔵をこれに当てることがある。 |
高札場 | 幕府や領主が決めた法度(はっと)や掟書(おきてがき)などを木の板札に書き、高く掲げておく場所のこと。宿場町の人目を引くところに設けられる。城下にも設けられた。 |
格子 | 細い角材や竹をたてよこに隙間を開けて組んだもの。(類)出格子、千本格子 |
郷宿(ごうしゅく・ごうやど) | 公用で代官所等に出頭する人々のための宿で、代官所からの通達や用件を村々に伝えるなどの公的な役割も持っている。(例)石見銀山大森の熊谷家・青山家など |
越屋根 | 屋根の上に棟を跨いでかけられた屋根のこと。屋内の土間などからの煙を屋外に排出するためのもの。(類)煙り出し |
鏝絵 | 日本で発展した漆喰を用いて作られるレリーフ。民家や土蔵の壁や戸袋に施されたものが多い。左官職人が鏝で仕上げて作る。宇佐市安心院町、伊豆の松崎町、射水市、島根県太田市などが有名なスポット。(類)漆喰細工 |
御坊 | 浄土真宗本願寺派の寺社の事を御坊と称し、この御坊を町の中核寺院として、門前町や寺内町が形成されてゆく。寺内町の町並みリストを参照 |
駒つなぎ | 家の柱などに付けた馬をつなぐ鉄の輪、牛のために土台の低い位置に着いているものもがある。石に鉄の輪をつけて駒つなぎ石(駒石)とした形式もある。 |
駒寄せ | 格子を取り囲むようにして取り付けられた柵。牛馬を繋ぐためと云われるが、実際には家の壁面を傷つけられるのを防ぐためにあり、私有地を示す境界でもある。その意味から犬矢来と同じ目的を持つ。(類)犬矢来・結界格子 |
こみせ | 雪国で、通りに面して民家の軒先から庇を長く出して、その下を通路にしたもの。越後地方で「雁木」と呼ばれるもの。鳥取の若桜地方では「カリヤ」と呼ばれるもの。 |
小屋組み | 屋根を支える構造を総称していう。 |
酒林(さかばやし) | 造り酒屋の看板。杉の葉を束ねて球状にし軒下に吊してあるもの。毎年新酒の出来る頃に新しいものを作るので、酒林が緑色の時が新酒の出来る頃を告げるようになっている。 |
座敷玄関 | 普通商家では建物の入口は土間になっていて、各部屋にあがるようになっている。この入口とは別に、住居部分に入口を設けて、座敷などに直接上がるようにしたものを座敷玄関と呼ぶ。奈良の大宇陀松山の竹田家住宅・林家住宅、近江八幡市の旧西川家住宅にその例がある。(類)式台玄関 |
散居村 | 通常の村や町は家々が寄り集まって集落を形成しているが、なかには、田畑の中に家が散在している村がありる。こう言う村のことを散居村と呼ぶ。防風林などで家を囲って独特の景観を見せる。島根県の出雲平野、富山県の |
桟瓦葺き(さんがわら) | 桟瓦は平瓦と丸瓦を合体した断面が波型をした瓦。軽量で安価なこの一枚瓦で葺いた屋根のこと。 →本瓦葺き |
式台(式台玄関) | 武家屋敷に見られる。屋敷内に入って母屋にあがるために設けられた入口で、土間を通らずに直接座敷に上がれる。式台はその板敷きの部分もこと。(類)座敷玄関 |
錣葺き(しころぶき) | 兜の錣のように屋根の流れの面を途中で一段下げて瓦を葺いた屋根。 |
下地窓 | 土壁の一部を塗り残して造った窓。(類)虫籠窓・羽目板切窓 |
下見板張り | 建物の外壁を横板の一部を重ね合わせるように張る工法のこと、または、そのようにして出来た外壁のこと。 |
七里役所 | 江戸時代、尾州家・紀州家などの大名が東海道筋に七里ごとに置いて七里飛脚の中継所とした宿。七里継宿ともいう。(例)由比宿に七里役所跡がある。 |
蔀度 | 建物外部に設ける戸のこと。鴨居に金具で吊って外部に跳ねあげて吊り金具で吊り下げて固定する。 |
漆喰 | 消石灰にふのり、苦汁などを配合して練った左官の壁材。色材を混ぜて、鼠漆喰、黒漆喰などとする事がある。 |
漆喰細工 | 屋根の上に上げられた漆喰でさまざまな意匠を凝らした置物。鶴、亀など子孫繁栄、家運長久を願ったものになっている。関宿に見られる。(類)鏝絵 |
修景 | 現在の生活機器類や建物の一部を、昔風の外観に作ったもの。例えば、エアコンの室外機などを木造の箱に収めて、外観を昔風に設えて街並みとの違和感を無くすようにしたもの。 |
撞木造り | 切妻屋根を直角に組み合わせた屋根の形式としたもの。屋根の形があたかも鐘または鉦を撞く撞木に似ているからこう呼ばれる。長野の善光寺本堂、新潟県関川村などに見られる。(類)カグラ建て |
商家 | |
真壁造(しんかべづくり) | 柱を見せる形式の塗り壁の工法。→大壁造り |
水琴窟 | 茶室入口、手洗いなどの地下に、底に小さな穴をあけたカメを逆さにして埋め込み、水がカメの穴から下に落ちるとき、カメの中で反響して澄んだ音をたてるようにしたもの。 |
杉玉 | 酒林を参照 |
助郷 | 宿場の近郷の村に人足や馬の夫役を課したもの。夫役を課された村、その夫役のことも共に助郷とよばれる。定数の夫役を課された村を定助郷,臨時の大通行に応ずて課されるものを大助郷と呼んで区別していたことがある。(類)加宿 |
隅蓋(すみぶた) | 入母屋屋根の四方の隅に雨仕舞のために被せる瓦。この瓦を装飾や魔除けの意味で意匠の凝ったものにして設置したもの。留蓋、巴蓋などとも呼ぶ。 |
すり上げ戸 | 建物の表口を遮断するための戸の形式。縦の溝にそって持ち上げて上部で止める様にしてある。現在の家屋にある雨戸の収納の戸袋を上部に持ってきたようになっている。 |
せがい造り | その形が、和船の両舵にある船棚(せがい)に似ているからこう呼ばれる。出桁造(だしげたつくり)を参照 |
関札 | 江戸時代、大名・旗本などが宿泊する本陣や脇本陣の門または宿の出入り口に、宿泊者の名を書いて掲げた札。宿札ともいう。 |
千本格子 | 縦の目の細かい格子。 |
惣村 | 中世の日本における百姓の自治的・地縁的結合による共同組織で、村落形態の一つ。近江地方に先駆的な発生を見る。長浜市菅浦にその様子が残る |
袖壁卯建 | 建物から外部へ突き出した壁。民家の二階軒下の両方の妻に突き出した壁のこと。装飾的な意味のほか防火の役目をもっている。(類)本卯建 |
台格子 | 格子の縦桟の幅とその間隔が大きいもので、上下の構造材に直接仕込んで取り外しが出にないように造られた格子。 |
出桁造(だしげたつくり) | 家の軒形式の一つ。軒先を深くするために、梁または腕木を側柱筋より外に突出して、その先端に桁を出した構造。(同)せがい造り |
出梁造(だしばりづくり) | 二階家において一階の床面より通り側えせり出して二階を造ってある形式のもの。この部分は、部屋の一部または部屋の縁側部分となっている。妻籠宿に見られる。 |
立場 | 五街道等で次の宿場町が遠い場合その途中に、また峠のような難所がある場合その難所に、休憩施設として設けられたもの。休憩のための茶屋や売店などのある場所。 立場が発展し、大きな集落を形成し、宿屋なども設けられたのが間の宿。 (類)間宿 |
千鳥破風 | 屋根の斜面に設けた小さな三角形の破風。→唐破風 |
茶屋 | 街道沿いにあって、旅人に休憩する場所とお茶、お酒を提供する。土地の名物などを出したりした店もある。宿場の外れにあるもの、宿場と宿場の間の立場と呼ばれるところにあるものなどがある。 |
中門造 | 曲り屋において、入口が厩(うまや)の先(妻入り)にあり、中門口と呼ばれ厩が通路になっている。 |
町(ちょう) | 尺貫法の距離の単位。1町は60間、1間は6尺で1.8182mある。1町は109.09mになる。町の上位の単位は里で、1里は36町で約4kmと覚えておけばよい。 |
築地塀 | 古くは土だけをつき固めたものもあったが、土台の上に柱を立て、それに張りつけた板を芯として、両側から土で塗り固め、屋根を瓦で葺いた塀のこと。 腰板を張りつけたもの、柱を塗り込めないで外にみせたものなどがある。 |
厨子二階(つしにかい) | 塗り屋造りの瓦葺き農家の、天井の低い二階のこと →本二階 |
妻入り | 妻側とは、棟に対して直角に接する側面のことで、この妻側を通りに見せている建物を妻入りという。→平入り |
妻壁 | 切妻造りの妻側の3角形になった部分の壁のこと。入母屋造りの場合の千鳥破風の部分も妻壁と呼ばれる。 |
出居 | 建物の表通りに面して縁を設けたもので、客に応対するために「出て居る」部屋の意味を持つ。現代流に言うとアウト・リビング。妻籠の民宿では、単に「出」と呼んでいました。 |
出格子窓 | 家の表の間の窓の外側に30〜45cm程張り出してつけけられた格子のこと。出窓の役割をする。 |
寺町 | 寺院が集中して配置された地域につけられる町名。寺院を都市の外縁にまとめ、攻撃の際の盾とする意図があったため、城下町においてその寺町が存在する例が多い。 |
天水甕 | 防火用に水をためておく大型の甕。屋根の上に揚げられることが多い。(例)秋田市旧金子家 |
土居 | 土を用いて堤状に築いたもので、城、館、集落の周りを取り囲み砦の用を成すもの。土塁とも言う。 |
問屋場・問屋 | 宿場町には重要な役目を持った問屋場と言う施設が設けられた。問屋場には大きく2つの仕事がありました。一つは人馬の継立業務で、もう一つが幕府公用の書状や品物を次の宿場に届ける飛脚業務です。業務を主宰する役人を務めるものを問屋という。 |
土縁・土縁造り | 土縁は多雪な日本海側に見られる。屋根の付いている縁側で、前面に格子戸や引き戸などで外部と仕切ってある。角館町の石黒家に見られる。 |
遠見遮断 | 街道などにおいて、外的の進入からの防御のため、町中を見通せないように街路を曲げてつけたところ。枡形・曲尺手・矩折など地方によってさまざまに呼ばれる。あて曲げもこの範疇に入る。 |
通り土間 | 家屋内に取り込まれた通路としての空間。間口が狭く、奥行きを持つ日本家屋に独特な様式。ブルーノー・タウト(建築家)によって世界にも知られている。 |
鳥衾(とりぶすま) | 大棟(おおむね)または隅棟(すみむね)などの鬼瓦の上に、反って長く突き出した円筒状の瓦。鳥などが鬼瓦の上に止まったり、糞をかけないための場所として付けられたものといわれています。雀瓦とも。発達した卯建飾りにも見られる。 |
名主 | 江戸時代の村役人で、民政をつかさどった村落内の代表者。東日本では名主と呼ばれることが多く、西日本では庄屋と呼ばれる。また、東北地方・北陸地方・九州地方では肝煎と呼ぶ。 |
なまこ壁 | 土蔵などの漆喰を風雨から保護するため、平たい瓦を竹釘で打ちつけて並べ、瓦と瓦の間の目地を漆喰でなまこのような形に盛り上げた壁のこと |
塗込造 | 柱や軒などの木の部分を壁で隠してしまう形式 |
塗屋造り | 2階以上の部分の建物以外に木部を露出させず、漆喰で塗りまわすが、一階では普通に木部が露出している。 |
練り塀 | 土と瓦とで築き、上を瓦でおおった塀のことで、今でも古い寺などにある。西宮神社の大練塀が有名。山口県の祝島のものは、土でゴロタ石を積み上げて漆喰で固めてある。 |
軒蛇腹 | 建物の軒を銅版を使って蛇腹上に覆ったもの。年を経ると緑青がふいて趣のある装飾性を持つ。レンガを使って蛇腹を仕立てる場合などもある。 |
登り梁 | 厨子2階において、低い屋根の居住空間を確保するために、梁を水平に掛けないで、大棟に渡すように掛けたもの。 |
暖簾掛け | 家の庇の下に取り付けたいたで、これに暖簾をかけて使用する。 |
箱階段 (箱段) | 近世の町家や茶屋などに見られる階段であって、踏み板の下に引き出しなど箱状の物入れを設けている |
旅籠 | 木賃宿を参照。(類)本陣、脇本陣 |
ばったり床几 | 揚げ店参照 |
破風 | 破風とは屋根の妻側にある三角形の外壁部分のこと。もともとは、妻部分の屋根の先端についている山形の装飾板をさしていて、妻の垂直な面に風が当たると左右に分かれることから破風といわれていた。 この装飾性を屋根に用いたものが、千鳥破風・唐破風と呼ばれるものです。 |
羽目板切窓 | 窓の一種で板壁に穴を開けた仮設的な窓。(類)虫籠窓・下地窓 |
梁行(はりゆき) | 建物の梁に平行な方向、梁間ともいう。→桁行 |
半格子 | 商家などによくみられる格子で、格子の寸法が途中までしかなく、帳簿のやり取りなどに取り外して利用される。 |
引揚げ大戸 | 家屋の入口の大戸で左右引きではなく、天井側へ引き上げて開放する大戸のこと。→大戸 |
平入 | 棟を街道に対して平行させた建物のこと →妻入り |
披本陣 | 本陣、脇本陣に凶事があったり、休泊中に異変(火災など)があったときなどに、緊急避難するための施設 (例)起宿の旧披本陣跡 |
ベンガラ | 赤色系の顔料。これを柱や建物の部材に塗って、部材の美装と保護を目的としたベンガラ塗がある。 |
檜皮葺き | 屋根を葺く材料に檜皮を使ってある家屋 (類)茅葺き、瓦葺き、板葺きなど |
本卯建 | 平入りの町屋の妻壁を屋根より一段高くして瓦などの屋根を乗せたものを軒先まで下ろし、防火壁としたもの。板壁、板葺きのものもあり古くは端部の補強や雨樋のような機能をしていたといわれる。(類)袖壁卯建 |
本瓦葺き | 本瓦葺きは桟瓦葺きに先行するもので、曲面の瓦を凹凸交互に重ねる葺き方。寺院や神社に多く見られる。 →桟瓦葺き |
本陣 | 街道の宿駅で、大名・公家・幕府役人などが宿泊した公的な旅宿。門や玄関など一般のものより格式の高い造りになっている。 一宿場に一本陣が原則であったところ、室津には六軒の本陣が置かれていた。 →脇本陣 |
本陣付御用旅籠 | 脇本陣と同格の格式をもった幕府指定の旅籠 |
本二階 | 厨子二階に対して、本格的な二階のことをよぶ場合に言う。 |
舞良戸 (まいらど) | 縦桟の板を入れて、祖に上に水平に横桟(舞良子)を間隔を詰めて打った引き戸 |
曲り屋 | 岩手県の中北部の旧南部藩地域に広く分布する民家。曲がりの部分は厩(うまや)になっていて、居室部と馬屋を直角に結合し、全体がL字形の平面を持つ建て方。(類)中門造 |
幕板 | 庇の下に着けた暖簾状の板で、風雨から店先を守るようになっている。 |
枡形 | 本来は城郭の縄張りにもちいられるもので、これを宿場の街道にとりいれた。敵の侵入を阻むため、街道を2直角に折り曲げてつける。防衛上の配慮のために設けた。岐阜県の大井宿・太田宿など各地に見られます。(類)あて曲げ |
町屋 | |
水切庇(水切瓦) | 壁面に雨水が直接当たることを避けて、または、壁面を伝い流れる雨水を排除して、壁を雨水の浸透から防ぐためのもの。室戸市吉良川町には、水切庇を何段も重ねたものが残っている。 |
起り屋根(むくりやね) | 屋根の中央部の上面をわずかに凸となる形に仕上げたもの。(例)美濃市小坂家 |
虫籠窓 | 塗り屋造りで塗り格子を付けた厨子二階の竪格子の窓をいう。その形が虫籠に似ていることからそう呼ばれる。明かり窓の一様式でさまざまな衣装が凝らされている。木爪型など |
武者窓 | 出格子窓などに更に突き出して作られた格子窓で、中に顔を差し入れて通りを見張る。城下町の商家に城主などが立ち寄ったときの警護用。岩村の木村邸に残されています。(同)物見格子 |
無双窓 | 内側と外側に同じ形の連子(れんじ)の引き戸を入れ、動かすことで一定間隔の隙間ができたり、閉まったりする窓。正式には無双連子窓という。(参考)→連子 |
棟覆い・棟飾り | 棟の雨仕舞いのために掛ける覆い。茅葺屋根では積み草を跨いで掛け(棟覆い)、その上に棟押えを施す。棟押さえは置千木、雪割りなどと呼ばれ、このような全体を棟飾りと呼ぶ。 |
持ち送り | 庇(ひさし)や出窓などのように突出する部分を支えるために、壁や柱などに取り付ける板材や斜め材をいう。これを漆喰で塗りこめたものを漆喰持ち送りと呼ぶ |
物見格子 | 格子の造りの一つで、外に張り出すようにつけられたもの(出格子)に対して、頭が突っ込める程度の小さいもので、外の様子を偵察するために付けられたもの。 今井で見られるものは、その用途が夜の街を照らす行灯としての物といわれている。(同)武者窓 |
八棟造り | 入り組んだ平面に千鳥破風などの装飾的要素を加え、城郭建築の影響を受けた複雑な屋根を構成した建築物の呼称。 |
宿札 | 関札を参照 |
屋根神 | 古い家屋の一階ひさし屋根や軒下などに置かれた火伏や厄よけの祠。秋葉神社、津島神社、熱田神宮、伊勢神宮などを祀る。愛知県や岐阜県に多く見られる。 |
屋根看板 | 庵看板を参照のこと。 |
屋根の形式 | 屋根は、切妻、寄棟、入母屋に大別される。 |
山あて | 街路の正面に山が来るようにして、街の景観に山が借景になるようにしたもの。知覧町の武家屋敷の街路がその例。 |
大和格子 | 建物の一階部分にある格子の組み方の間隔が荒くなっているもの。→連子格子 |
大和棟 | 奈良県に見られる建築様式。切妻の草葺と瓦葺の組み合わせになっている。母屋の屋根を草葺とし、くどや土間の部分の下屋根を瓦で葺いてある。また、妻壁の両側を卯建として高く上げる。高塀造ともいう。(例)重文・吉村家住宅(羽曳野市) |
要害 | 幕府の1つの藩に1つの城だけしか認めないという一国一城令に対して、城ではなく要塞として、辺境の守りのために置いた。仙台藩の21要害が有名。その内の一つが岩手県の金ケ崎要害。薩摩藩における外城も同じ意味のもの。(類)外城 |
吉野造り | 家屋の通りに面した正面が1階になっていて、裏側の傾斜地にもう一つ下の階を持つ建て方。裏から見たら二階建てで、表から見ると平屋建てに見える。 |
里(り) | 尺貫法の距離の単位。(参考)→町 |
連子 | 細い材(連子子)を縦あるいは横に一定の間隔で並べたもの。 |
連子格子 | 建物の一階部分にある格子で組み方の間隔が細かくなっているもの。格子間の空きを格子の見付き寸法で1〜3倍程度のもの。→大和格子 |
脇本陣 | 街道の宿駅で、本陣の予備にあてた旅宿 本陣が大名や幕府の役人が宿泊するのに対して、家老などの随伴者が宿泊する。また、本陣が他の大名が宿泊している場合などの予備的に利用される。これらの利用がないときには一般の宿泊にも利用される。→本陣 |